トーについて

1999/12/27


トーイン=マイナスと思われている方が結構いるようですが、私はトーイン=プラス派です。
この「トー論争」に決着をつけるために、実験を行います。


トーイントーアウトの理屈を知らなくてもゲーム上それほど問題無いので、
まず、プラスとマイナス、どちらが曲がりやすいのかを検証したいと思います。


実験:極低速におけるトーの働き

実験車

車両は「AE86スプリンタートレノ83年式」
セッティングは
車高前後115mm、バネ前6.0k後7.0k、ダンパー前後縮み5伸び8、キャンバー前2.0後0.0、LSD23.56.23、ノーマルホイール、タイヤはスーパーソフト。


方法

止まっている状態でハンドルをいっぱい切り、アイドル回転から5速で発進し、一週半した時の位置を調べる。
発進後はアクセルべた踏み。
調べるのは、フロントのトー+0.20、0.00、-0.20の三通り。
リアは0.00で固定。


結果

以下の図の通り。

プラス0.20mm
プラス0.20mm
トー0.00mm
プラマイ0.00mm
マイナス0.20mm
マイナス0.20mm
プラスよりマイナスのほうが、小回りが効いているようだ。

考察

高速でも低速でも挙動はほぼ同じなので、弱アンダ−ならばマイナスの方が曲がりやすい、と言えます。
面白いのは、+0.20、0.00、-0.20で速度が5km/hずつ違う事です。
この事から、速度を押さえてでも小回りしたいときはマイナス、と言えるのではないでしょうか。
まぁ実際には足回りの最終的な味付けに使う程度で、こんなにトーをつける事はないと思いますし、単純に最高速ならトーは0の方が速度は伸びます。

リアトーも変えて同じように実験したが、ほとんど変化が見られませんでした。
おそらく、デフが効いてタイヤがひきずっていたためと思われます。


トーイン、トーアウト

マイナスが曲がりやすいであろう事はわかったが、では、どちらがトーインか?
曲がりにくい、すなわちプラスがトーインと思われる。
なぜか?
ことわざにもあるでしょ、「トーイン矢の如し」って・・・・うそです。冗談です。

まず、なぜトーがついているか、と言う事なんですが、これにはキャンバーが関係しています。
大きな荷重をかけた時、ホイールはハの字に変形しようとする。
こうなるとベアリングなどに大きな負担がかかるので、逆ハの字にホイールをつけるようになった。
このキャンバーがついているので、ホイールはそれぞれ外側へ転がろうとする。
それを内側へ引き戻すのがトーイン、と言うわけです。


アッカーマン旋回理論

さて、インとアウトどちらが曲がりやすいか、ですが、私の乏しい知識からいってアウトが曲がりやすい。

コーナリングしようとするとき、各タイヤが描く軌跡を考えると、各ホイールはコーナリングの中心点oを中心とした同心円上を通ることになる。
この場合、各ホイールは、その回転半径に対して直角でなければならない。
もし直角になっていなければ、当然そのホールは同心円の軌跡から外れタイヤはスリップし、スムーズなコーナリングは得られない。

トーなし



コーナリング時に前輪が平行のままだとすると、左右のホイールへ直角に引いた回転半径は一致しないで平行のままになる。
つまり、コーナリング中心点で交差しない。
だから、強いてコーナリングしようとするとタイヤを引きずることにより、スムーズな走行ができなくなる。

では、今ある車は皆トーアウトか、というとそうではなく、ほぼトーインである。
しかし問題無くコーナリングできる。
なぜか?
それはアッカーマンリンクにより、直進時はトーイン、ハンドルを切った時はトーアウトになるようになっているからである。

アッカーマンリンクとは、ステアリングリンケージを平行ではなく、台形に組み上げたものである。
こうすると、ハンドルを切ってリンケージを動かした場合、ナックルアームの支点の位置が左右で異なるので左図のように切れ角にも差がでてトーアウトになるわけです。

ナックルアームの角度θをステアリングアームアングルというが、この角度とアームの長さは車の特性、特にホイールベースとトレッドによって大きく変わる。



トーインが直進安定性がいいと言われるのは、トーアウトの逆の理由です。
曲がろうとすると、内側のホイールが抵抗になり、真っ直ぐに戻るわけです。

普通、新車は事故が起こらないよう安定性重視でセッティングされています。
トーアウトで安定するなら、そうなっているはずです。
しかし、マイナスキャンバーが付くようになった今でも、ほぼトーインが主流です。
ということは、やはりトーインの方が直進安定性がよい、といえます。

従ってGT2におけるトーは、前述の実験で大回りしているプラスがトーイン、小回りしているマイナスがトーアウトです。


ふぅ、疲れた・・・
しかしココまで検証しても、GT2においてトーの役割は微々たるもの。もともと直進性はいいですし。
さらに、レーシングカーには、高速でヘアピンに進入した時の重心に働く遠心力とコーナリングフォースの作用点をあわせるために、逆アッカーマンリンクに近いリンクを構成することもあるという。

奥が深い・・・

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